あとがき
日本では古くから”猫が顔を洗うと雨になる”といわれており、気象に関する話がいくつか残っている。
人を招く、金を招くという招き猫の思想は、中国の「西陽雑俎」(ゆうようざっそ)の“猫が顔洗いをして、前足が耳より上にあがると客が来る”という俗信が日本に入ってきているようだ。本当に客が来るかどうかより、顔洗いのしぐさは可愛く、手招きをしているように見えて愛くるしい。
伏見でこの愛くるしい猫を土人形にし、狐の代わりに俵の上に座らせ、打ち出の小槌や小判を持たせると縁起物の福猫になった。この福猫が江戸でファッション化して目は細い狐目から丸い猫目へ、体はふっくらと変っていった。型や形が変っていくと同時に、あちこちの猫にまつわる話とくっついて福猫から招き猫と呼び名まで変わり、あっという間に全国に広がっていったのだ。
 時代とともに目はますます大きく丸くなり、体はとうとう二頭身になって、今では商売繁盛だけでなく、合格祈願や縁結びの縁起物にまでなっている。

門真の民話より

笑い猫がらすけ

発行日 平成14年(2002)6月

文・絵 東口 恵子

発行所 きまぐれ書房